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さて、今回は、『花を咲かせる揚げ方』を伝授致しましょう。
天ぷらには、色々な「揚げ」のスタイルがあります。
当店のようなカウンター越しの揚げ出しの『素材を楽しむ天ぷら』を提供している店では、『棒揚げ』…(すなわち「衣」は薄衣で、花を咲かせません。)のスタイルのお店がほとんどだと思います。一方、『花を咲かせる揚げ方』とは、鍋に素材を入れた瞬間から、衣を余分に素材に付け、見た目にもボリュームがある天ぷらに仕上げます。
一番分かりやすいのが、「天丼」や「天ぷらうどん」等に乗っている天ぷらです。
一般に『花を咲かせる』のはどのような場合が多いかを考えてみますと、衣にボリュームを付けることによって、例えば、天丼の「たれ」、うどんや蕎麦等の「汁」が、衣の表面積が増えることにより、『棒揚げ』の時よりも食べた時の満足感がでる。
つまり、素材と同時に衣も楽しむ天ぷらになる訳です。
また、ただボリュームを出す為だけに、『花を咲かせる』のとは別に、衣に「グルテン」が出たときのように、衣に「立体感」が得られない場合や、素材によっては、急激な温度の変化による収縮を防ぐ為に、あえて花を咲かせる技法も必要になります。
当然ながら、この場合はボリュームを目的としている訳ではないので、上記の天丼等の「花を咲かせる」意味とは違うわけです。
『棒揚げ』も、『花を咲かす』のもそれなりに技術が必要になります。
よくある質問の中に、
「油の表面で衣が散ってしまい、上手に衣が付けられません。」
「海老に花を咲かせたいのですが、分厚くなるだけで、平らに花を咲かせられません。」 …この二点が圧倒的に多いですね。
では、どのようにすれば「花を咲かせる」ことが出来るのでしょうか。
●素材には必ず打ち粉をする。
薄衣だけでは、花は咲かすことはできません。
衣が薄いと、油に入れた瞬間に余分な衣が散っていきます。棒揚げならば、このままで良いのですが、花を咲かす為には、まず完全に素材に打ち粉をして下さい。衣の乗りを良くする為もありますが、棒揚げの時よりも、衣が厚い分、油の中に入っている時間が長い為、素材を保護しなくてはならないからです。
●油の温度は「やや低め」で揚げ始める。
適温で揚げ始めてはいけません。 前回の『油の温度』でご説明した時と矛盾しますが、高温で揚げ始めると、薄衣では、花を咲かせようとしても、表面で散ってしまいます。
●鍋の手前側を高くして、素材を入れる場所の油の深さを浅くする。
実は、これが一番の重要な部分なのです。
高温の油の中に「冷えた素材」を入れる訳ですから、油の中に入れてから少しの間、素材は鍋の底に沈みます。(当然ながら、素材やその大きさによっても大きく左右されます。)
熱を加えることによって蒸発作用が働き、やがて脱水された素材は油の表面に浮いてきます。この浮いてきた時に、一生懸命衣を付けようとしても、まず上手くいきません。もっと簡単にいうと、揚がってしまった天ぷらに花を付けることはできません。
天ぷらの難しい点は、何度も書いている通り、『温度の変化』、『油の変化』、『衣の変化』…全ての変化にタイミングよく対応しないとだめなわけです。先ほど、やや低めの温度で揚げてくださいと書きましたが、当然ながらそこから全開の強火に持っていかないと、衣の量が多い分、油を吸ったとっても重い天ぷらになってしまいます。
棒揚げの時よりも神経を使うかもしれません。
さてさて、次は鍋にも一工夫をして下さい。底の深い鍋では、花を咲かすことは難しくなります。
先ほどの話にも共通しますが、底の深い鍋の底に沈んだ素材に衣を付けようとすると、上面の温度の方が高い為、衣は見事に表面で散ってしまいます。では、浮き上がってきてから…という意見がでそうですが、その時はすでにかなり火が入っていますので、これもまた美味しいものはできません。というか、衣も乗りません。
では、ここで一工夫をしてみましょう。
鍋の手前側を高くして、素材を入れる場所の油の深さを浅くすることによって、ほとんどの悩みが解消されると思います。(笑)ガスこんろと鍋の間(または、五徳)に、陶器や石などの不燃物を挟み、鍋の手前側を若干高くしてください。ただし、高温の油が入っていることを忘れないで下さいね。油の油面は、素材を入れるごとに上がってきますから、くれぐれも注意してください。
さぁ、こうすることによって、鍋の手前側に冷えた素材を投入しても、浅い為に衣を乗せやすくなりましたね。
※ 底の深い鍋の場合は、油の量で深さを調節してもかまいません。…が、
油量が少なければ少ないほど、劣化も激しく、温度管理も難しくなる事を忘れないでくださいね。
●衣の濃度を上手く調性しながら揚げる。
当店は花を咲かすことはあまりしませんが、揚げる素材、油の変化、衣の変化に対応する為に、衣のボールの中には3つの違う濃度の部分を用意しています。同じようには出来ないかもしれませんが、衣の濃い部分と薄い部分を一つのボールの中に用意してみてください。簡単に説明すると、衣が出来た時に上面に粉を少し足してください。これで、衣の上面の方は若干濃い濃度の衣、衣のボールの中間は薄い衣になりました。
●衣箸は太いものを使う。
花を咲かせる為には、衣箸も太いものを使ってください。細い箸ですと、箸に衣が乗る量が少ない為、時間がかかります。その間に揚がってしまうと、その時はすでに衣は乗りません。とにかく油に入れてからは「速さ」と「タイミング」を要求されます。
さぁ、ここまでで、ご理解できましたでしょうか?
では、海老を例にあげて実際に揚げて見ましょう。
●海老の場合
まず、剥いてある部分に完全に打ち粉して下さい。衣の濃度の濃い部分を付けて、鍋の手前の浅い部分に静かに投入してください。油の温度は170度前後です。上手に仕上げる為に、最初は一匹づつにしましょうね。(笑)
さて加熱をしながら、太い衣箸で最初はやや濃い目の衣を「海老の尾っぽ」、「頭の付け根」と交互に、海老の上を箸を走らせるように、衣を直接海老の上に付けて行きます。この時に、箸が油に入っても気にせず、海老に直接当たるくらいの方が上手に出来ます。衣を付けている間に温度も揚がっていきますので、今度は衣の薄い部分を続けざまに海老の上に箸で乗せていってください。リズミカルに海老の上で前後に乗せていくと、均一に花を咲かせることが出来ます。衣の濃度が濃すぎると団子になってしまいますから気をつけてくださいね。衣が上手く着いたら、鍋の奥、油の深い場所に移動させてください。花を咲かせた部分も完全に火を通さないと、噛んだ時にお好み焼きの食感になってしまいます。(笑)
いかがでしょうか?上手に出来ましたか?
花を咲かせる技法は、お店によってかなり違います。私は、兄の店で修行していた時代に、どうしてもこの技法を身につけなくてはなりませんでした。最初は団子になったり、やはり表面で衣が散ってしまったりで、なかなか上手に出来ませんでした。とっても難しい技法かもしれませんが、ぜひともチャレンジしてくださいね。
追記。
天ぷらの揚げ方を文章で表現するのは、とても難しく、長くなってしまいます。もし分からない点がございましたならご来店の際に声を掛けてくださいね。
(お客様からのお問い合わせ、ご要望がとっても多い為に、急遽『花を咲かせる揚げ方』をUPすることに致しました。 2003年1月4日 )
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